　前田家ゆかりのお品　新発見
（櫻井家　九和会所蔵）

　利嗣公と朗子夫人のお歌　
（詠まれた年代は不明）

短冊箱の内側に錠二のメモ書きが貼付され、『大正13年3月6日　有栖川宮様御使　酒井太一郎氏こられ、故慰子殿下御遺物として頂戴する』剣梅鉢唐草紋蒔絵短冊入れに短歌二首が奉書に包まれ納まっていた。奉書上書きには『正三位公御深（親）筆短冊　』とあり。短冊は非常に美しい保存状態であった。石川郷土史学会幹事・横山方子氏に読み明かしをお願いした所、ご友人の戸出友子氏のご協力も得て短歌を掲載することとした。慰子（ヤスコ）妃は元治元年（1864･2･8）生～大正12年（1923・6・29）没。第十四代加賀藩主前田慶寧（ヨシヤス）公の四女で利嗣（トシツグ）公は実兄。明治13年(1880･11･11）に有栖川威仁（タケヒト）親王妃となる。

○窓前蛍の詠み手、前田利嗣(トシツグ）侯爵・安政5年（1858・4･19）生～明治33年(1900･6･14）没。父は加賀藩第十四代藩主・前田慶寧）公・天保元年（1830・5･4）生～明治7年（1874・5･18）没。
○夕花の詠み手、朗子（サエコ）夫人・明治3年(1870･6･23)生～昭和24年（1949･11･15)没。鍋島直大（ナオヒロ）侯爵・佐賀藩第11代藩主の長女で明治17年（1884･7･20)に利嗣公に嫁す。

慰子妃のお形見分けに慰子妃のお歌ではなく利嗣公と朗子夫人のお歌を頂戴したいわれは不明であるが、錠二の貼り紙には続きがあり、「此の品と並びに画福　色紙箱を下さる」とあり、掛け軸と色紙箱も頂戴したようだ。
平成13年に国立科学博物館に寄贈されたお品の一部に含まれていると思われる。
利嗣公、朗子夫人、有栖川慰子妃との関わりを検証してみよう。　